消しゴム/たもつ
 
 
 
手の知らない言葉を
書き続けていく
手のすることはすべて
わたしを助けるのに
わたしのすることのすべてが
手を助けるわけではない
途中、水が足りなくなって
手を洗いに行く
排水溝に落ちたまま
帰ってこれなくなった叔母が
いつものように文句を言う
いつか菓子折りなどを持って
謝りに行かなければ行けない
と思っているけれど
何がふさわしいか悩んでいるうちに
数年が経ち
みな、年を取った
消しゴムの行商人の軽トラックが
音楽を鳴らしてやってくる
今年もすっかりと夏だ
呼び止めて消しゴムを買う
二個で百五十円
毎年来る人とは違う感じの人が降りてくる
いろいろと事情があったのだろう
世間話をしているうちに
昔からの知り合いのような気がしてくる
それでは、と立ち去ろうとすると
おまけにひとつつけてくれた
手がわたしのために受け取る
 
 
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