ね?マングローブのほとりで?/結城 希
 
ふつと
その儚い生涯を終えると

私は
激しく流れる水面に舞い落ちた

釣り糸を垂れる 老夫たちや
喧しくさえずる ハチドリたちを横目に

私は流れ落ちてゆく

ピラニアの鋸歯をくぐり抜け
渓流を抜ければ
木々に阻まれていた陽光が
溢れんばかりに私を照らす

私は川を下り そして
母なるマングローブの元にたどり着く

その水上の幹を
イワガニがいそいそと駆けてゆく
その頭上の枝から
ネズミが不思議そうに私を見下ろす
その根は仲間と足を絡めて
かけがえのない
水と大地を 守り 育む

澄んだ水の音が聞こえる

いま この命のゆりかごで
私は 眠りに就こう


(即興ゴルコンダより)
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