立体裁断(連詩)*夏野雨、渡ひろこ、他/たちばなまこと
 
刺し傷は勲章と
赤の色彩が薄く笑って
布地を染める
地平線を縫い
欠けた月を繕い
企みを隠しきれない
乳房を覆う

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軍シャツのボタンを外し
喪服のボタンホールは残したまま
弔電とゲリラ詩
母性の因子よ
バティックの少女よ
血統の最北端で誘発する
「敵は本能にアリ」
鉄の味が舌に残る朝焼けよ
「ブルース、オマエも、か
            。」

*

布の回廊を走り抜ける
更紗、リネン、コットンツイル
海底、教室、兵営、暗がりの砂漠に、
夏の自室に
たちあらわれる塔、奪われた曲線
立体裁断

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明け方の紅が首筋に這い上がる
シャネルを真似て下げた裁ちばさみに
恋占いを刺す
明け方の月が太陽に白く塗られ
届かない場所へ指で尺をとり
クラフト紙に記す
平面から立体へおこされる彼の型は
フリー







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