逆創世記/高梁サトル
 
です

「ごちそうさま、
気が付けば周りはみんな豚でした
大きくなりすぎて獣舎を出た僕は
急に寂しくなってダッチワイフを買いました
彼女の薄い皮膚を噛み裂いて
熱い白濁の骨髄を飲み干す
そんな衝動を抑えるたびに
あの日夢見た
沙羅の木陰が遠退いてゆきます

「ただいま、
男のかたさに貫かれて
女のやわらかな洞窟に駆け込んだ
この洞窟はアイヌの昔話のように
神様たちの国へ繋がってはいないの
岩壁をなぞれば響く青鷺の声
娼婦も聖母も
同じ穴のむじな

「おやすみなさい、
深い湖底の燐光の中に
革命を夢見て散った子らの子守唄が響く
水面に落ちた枯葉をついばむ
鳥たちが寂しそうに鳩尾を震わせるのを見て

あの人の乳房のことだけ想います


 さようなら、
 ひっくり返したら
 もうあなたには伝わらない物語」

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