ノート(外へ ふたりで)/木立 悟
 


あなたのざくろを手にとり
涙が止まらない
いつのまにか降った雨で
道は濡れている
雲は西へ西へ西へと渦まく
夕暮れはもう地のほうから蒼い


鉄塔をまわり終えれば
答えは来るはずだった
あなたとふたり
緑のなかに閉じこめられて
そのままでよかったはずなのに
わたしは火をつけることに決めたんだ


古い食卓が燃えてゆく
用意された果物が燃えてゆく
後ろを振りかえると
火が川だけを隠して立っていて
同じ流れの違う川みたいに
夜の雲を明るくしていた


わたしはあなたの手を握る
すると羽が降るようだった
今ちぎられたばかりのあたたかさで
見えない色がちらばって
空を鏡のようにして
ふたりの笑みを見せてくれた
野を去る背中を見せてくれた




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