父さん/月山一天
 


奈良のおばあちゃんが
11通りもへんしんできるマジンガーロボットを買ってくれるって言ったから
おばあちゃんと一緒にいたかったんだ。
そう言って、かえりたくないかえりたくないかえりたくないかえりたくない
とだだをこねたので、父さんはおばあちゃんと喧嘩してしまいました。
父さんはおこると、なきそうな顔になるので、
怖くなって見ないように下を向いたら、目の前の岩に肌色のでっかいクモがはりついていました。
となりでいとこのかおり姉さんが僕の肩を抱いて大人は嫌だと言いました。

車の中、オレンジ色に染まりかけの青空をずっと見ていました。
父さんが泣いていると思ったからです。
そういえば、きのう昼、小さなクモをつぶしました。
さっきのはそいつの父さんだったのかもしれない。
「ごめんなさい。」

ちんもくのなかで、
そっと瞬きをすると
からすが2羽飛んでゆくのがよく見えました。





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