しみ/有末
彼女が吐き出す負け惜しみの祝福の棘をゆっくり摘まみとる。理性と論理でメッキを施された僻みを呑み込む。なるほど、とても上手な言い方だ。でもただの不愉快な猿真似じゃないか。結局、全てが借り物だ。私のこの嫌悪と憧憬が彼女の愛読するさる小説の滑稽な模倣物であるように。しかしおよそ全ての世界に模倣に端を発しない行いが?模倣であることが何か低俗だと感じる気持ちすらただの模倣であるというのに?
私は可愛い彼女を選びはしないし、手を伸ばすこともないのだろう。与えられた役割を忠実にこなして愛しさなんて微塵も見せないまま不思議な微笑と彼女が形容する顔を張りつけたまま落ちていく。あなたのそういうところは好きよ、そう言った彼女になんのことはないとでもいうようにありがとう、と。そして沈黙が私たちを捉える。その後に私たちがどうなるのか、静止したままに淀み続けるのか、それとも巻き戻されるのか閉じられるのか…そんなことは気にすべきことではない。だからただ私はまったいらな微笑みだけの紙上の一筆画に還元されよう。
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