ぼやけた、心の外/番田 
 
何かですらもない音楽すら、理解されずに寝転がっている。私はそこにそれを聴いたのだが、あなたはそこをそれに聴いていないと言ったのだった。私はこれを読んだのだが、あなたはそれを私のここに閉ざすと、空の向こうを向いてやってきた。山には凧が一個も飛んでおらず、私の心には幾分、遠くはないように思えた。白い雲の中をどこまでも飛んでいくように思えた。緑の山があり、白い谷がそこにはあることだろう。上にはぽつりと出歩く行商人などいないのかもしれない。一人は芋売り、くじ引き、こちらにはアイスキャンディー屋、猿回し。それらを楽しむには、私の子供には幾分小遣いが無さ過ぎた。彼は家に帰らず、テレビでも見ていた方がよほど利口だと知っている。私はそんな彼らのひとりの暮らしなど知らない。そして私は言葉も映像も理解していて、寝転がっている。寝転がっていないのは、ここにこうしている私の心だけなのかもしれない。


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