羽と自由/葛西曹達
 
生まれながらにしてセミは
飛び方を知っているんだ
人間はもう忘れてしまったよ
しがみつくだけの脱け殻だ

子供の頃の僕らは
光に群がっていた
あの太陽のそばまで
飛んでいけると思っていた

大人になっていつしか
光を遠ざけていた
誰かが作った靴で
ただ地を這うばかり

夢の中で浮かんだ体
あの時は幸せだった
目が覚めた真夜中
時計の音だけ響いた

洗濯機の中の水
テレビに映る幻影
ジグソーパズルのピース
みんなみんな不自由だ

五感が嘘をついても
鏡はこのとおり正直で
背中に羽がないことを
教えてくれるんだ

止まない鳴き声に
頭の中は支配されて
飛んでいた幻想を
ことごとく否定する

羽の代わりに生えた
手と足を使えば
いつしか違うやり方で
自由になれるのかもね

生まれながらにして
自由なんてなかったんだ
みんな知らないのかな
自由は掴み取るものだって

羽なんて無いから
不自由を背負って
自分を手に入れることで
空を飛べるのかな

飛んでいけるのかな
自由になれるのかな
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