息を吐く/黒木みーあ
 

{引用=
 
窓の外
ふるえていた風が
いつの間にか足元を這い回り
行き場をなくしてうろうろとしているので
夕刻、わたしは
ゆるやかな地平の傾斜に沿って
飛び込んでくるひかりの粒の中
内側へ少しずつ
丸く なっていく
  
そんな ふうにして 
またひとり
人がいなくなったと
音のないニュースの字幕は
寂しいことばかりを隠そうとするから
六畳の
畳の上では燃えはじめた陽の色が
どんどんと
濃くなっていく

目の、奥の奥の深くの方では
なにやら得体の知れない生き物が
騒ぎはじめているというのに
わたしはいつまで経っても
覚束ないまま



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