唯一の救い/一 二
 
怒りと憎悪は人の世の兄弟
胸を灼く荒廃は人間を苛める

胃の腑から沸き上がる痛みは全てを呪い
何より最も強く己自身を呪い苛める

血生臭く罪悪に満ち溢れ
復讐と怨恨が全ての理の神たる人の世!
何もかもが壊れ狂った人間という生物!
野蛮で
粗暴で
残酷な人の生
人の生には不信と悪意の精霊が満ち満ちている!

我等は腸を灼かれ魂を冒涜され汚辱に塗れる
故に人は救いを求めさ迷い
唯なる美の名跡を求め続けるが
手に取るは崩れ落ちる紙片

身を灼く瞋の疫病に憑かれ
もはや幾ばくも無きにとき
ふと頭上を見上げれば
青き空に掛かる宿り木の上には
小鳥の歌い声
歌に釣られ歩き出すとき
ふと見た足もと
小さくも輝ける百合の花
花々の仄かな乳香のような薫り

空の王者の沈んだ跡には
煌めく万天の妙なる宝石

嗚呼、語らなき麗しさよ
汝が自然は天の美なり
我等の唯一の救いなり

大いなる自然の祝福
それは人の中にもまた宿る

天の恵み
そは、幼子の裡なる魂
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