参議院選挙へ みんなと行く/オイタル
 
ゆく道の車の窓に
雲を光らせ 幟旗を押し立てて
見知らぬ男たちが手を振る
起きぬけの笑顔で

すぼめて垂らした傘の先を
水たまりに映して
参議院選挙の投票に行く

昨日死んだ紺の背広の彼には
まだ濃く選挙権が残っているので
連れていく

声をなくしたまま眠った母は
一年を過ぎてうっすらと
選挙権が滲んでいるので
連れていく

一緒に父も 連れていく

色彩のない風の中で
朱色にふとんを焼かれた従弟の選挙権も
少し庭に架かっているので
連れていく

(また振り出した雨が
 肩を少しずつ冷やしていく)

丁字路のところで
犬が吠える 奴も連れて
[次のページ]
戻る   Point(9)