参議院選挙へ みんなと行く/オイタル
ゆく道の車の窓に
雲を光らせ 幟旗を押し立てて
見知らぬ男たちが手を振る
起きぬけの笑顔で
すぼめて垂らした傘の先を
水たまりに映して
参議院選挙の投票に行く
昨日死んだ紺の背広の彼には
まだ濃く選挙権が残っているので
連れていく
声をなくしたまま眠った母は
一年を過ぎてうっすらと
選挙権が滲んでいるので
連れていく
一緒に父も 連れていく
色彩のない風の中で
朱色にふとんを焼かれた従弟の選挙権も
少し庭に架かっているので
連れていく
(また振り出した雨が
肩を少しずつ冷やしていく)
丁字路のところで
犬が吠える 奴も連れて
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