さくつきみやま ?/木屋 亞万
 

卵の殻で黄身だけをえこひいきすれば
まとわりつく白身は離れていく
きみの周りにいつもいる
人と離れるときがないから
どうしたものかとうずうずしていた
結局きみは殻から外へ出なかった


みや

雲の山の頂にこじんまりとした神宮がある
小さな赤い鳥居があるだけのもの
そこに確かに神はいる
何をするのでもなく
ただひたすら月を見ている
たまに人が紛れ込むけれど
神と人が出会ったかどうかは
神のみぞ知ること


やま

今夜が山だという言葉がこの世にある以上
その言葉が意味通り伝えられる状況がある
その山を誰でも越えられるわけではない
超えられなければ山の向こう
もう帰ってはこない
棺桶にジャケットと帽子と煙草を入れ
足元の草鞋の側には履き潰された革靴を入れる
母が仕送りの荷物を準備している姿を
始めて見てしまったような気がした
父は遠くに行ってしまったのだ
だから燃やして送るのだ

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