さくつきみやま ?/木屋 亞万
さく
種から育てたツマベニが咲いた
雨の季節が過ぎた庭先
種から育てたうちの娘が
爪を赤く染めて
わたしにさわらないで
と言った
弾ける前の赤い唇
くつ
爪先と踵が硬い革靴
絆創膏を貼りながら歩き続ければ
少しずつ優しい顔をする
優しさに足が甘えきった頃に
履き潰す
コッペパンのように膨らんだ皮革
爪先の底から破れていく
つき
黒い雲が低空を占拠している
雲より上ならいつでも
月見をすることができる
高くそびえる雲に登ろう
清い心があれば誰でも
そこを歩き回ることができる
生き物ひとついない静かな世界
きみ
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