「従順な正解」のためのデッサン/草野大悟
 
それは、うす紫色に、妖しく 輝く。

 静かな夜でなくてはならない。砂糖と塩とに出会うのは。
 シーン と、音のする満月の夜なら、なおさらいい。俺たちが、狼そのものになる満月の夜、
  砂糖と塩は
  白い皿に盛られて
俺たちの前に現れるのだ。
 それは、幻かもしれない。しかし、確かに、真っ白い磁器に 真っ白い砂糖と塩とが盛られて、生け贄のように俺たちの前に出現するのだ。
 俺は、知っている。どちらの皿が砂糖で、どちらの皿が塩かなど、とうに。
 それは、うす紫色に輝くことを、秘やかなヒントとして、ここに提示しておこう。
 白いテーブルに ふたつの白い皿。それらの中に あくまでも
[次のページ]
戻る   Point(1)