世界の終わり/Oz
雲の中に
手を突っ込んで
沈黙を取り出す
雲は
散り散りになり
水滴となって
地上に落ちる
沈黙は
僕の手の中で
生暖かな熱を放ちながら
「沈黙」を続ける
そんな雨が降る
地上では
一匹の狼が
森を駆ける
人間の赤子を一人
殺してしまった
腹を割き
臓物を引き出して
喰ったのだ
赤子は
木製のバスケットに
入れられていて
ギャーギャーと泣いていた
狼にとって
それは絶好の食事だった
特に腹が減っていた訳ではない
でも
そうせざるをえなかった
狼の爪は
ツルンとした腹に刺さり
舌は新鮮な血を啜った
特に美味かった訳ではない
顔
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