透明標本/水川史生
 
展開する君が散り やがてそのまま上空へ還るだろう
青冷めた真四角が熱を失くし ひらひらとたゆたうようにして髪を透かした
片手に本 片手に針を持って君は
発光する翅片を集めて 擦りよせる額で標本を作る

(「黙っている」)
(「盲目的に?」)
(「盲目的に」)

薄紫にさらされながら 骨(或は、君の憂鬱)、震える
見通される、と唇に乗せる 白紙が凌辱を待っている
液体に浸され つながれる手法が 糸に似て解けて絡まるでしょう
綴じ込んで 骨(或は、君のかなしい指)、
六枚の翅(やわらかく、硬質的な硝石)、
濡れた肢体が、君、今、確かに弛んだ

(呼吸が止まっている)
(血液、あふれ、る)
(感覚、途切れている)

(心音、聴こえる)
(聴)
(こえ)
(る)
(聴こえる───!)

胸を貫くならどうか一息で
全てを暴かれて僕は 君の指で定義される
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