僕は雨を待っていた/きりえしふみ
かった
ただ無言で雨を待ちわびた
(それは罠ではなかったか?)
めかし込んだ衣装を 剥ぎ取る手を
僕の色をすっかり奪ってしまう程の戦慄
『今まで』を跡形もなく 引きちぎる手を
ただ無力に
赤子のように なすすべもなく
泣いてみたかった
困窮したかった
疑いたかった
求めたかった
『欲しい』と伸ばした手を
誰かに受け止められたかった
その誰かが創造した闇夜に 引き込まれたかった
そこでひっそりと穏やかに 生きてみたかった
この鎧を脱いで
僕は涙の雨を待っていた
認められた数万行の詩句を滲ます程の
激しい雨を待っていた
ふいに僕から 『……』を引き出す程の
(c)shifumi kirye 2010/7/3
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