「喪失」/ベンジャミン
 
{引用=さようなら
と、呟いて見送った涙
呟いた、さようなら、は
涙にむかって
そう
わたしの中でもっとも純粋な
透明な、わたしだった
抜け落ちる髪よりも
切り取る爪よりも
わたしは、ただ悲しかった
透明なわたし、に
どれほどの景色がうつっていただろう
わたしの、からだの中で
大切にしていたもの
それが、そのとき
たしかに失われたことを
さようなら
と、一言で見送るには
わたしは、まだ成熟していない
だから
そう簡単には流すまい、と
思っていたのに
ごめんなさい
わたし、
約束するほどの強さもなかった
台所のテーブルで
ガラスのコップにいれた水を
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