駅前再開発2/……とある蛙
風が駅前の野原に吹いている。
野原に生えた野草の葉は
優しくうなずきながら
隣の葉にお辞儀をしている。
風が駅前に優しさを運び
優しさで満ちあふれた
空き地の前に僕は独り佇む
風を拒むように立派な駅舎はあるが、
緑の風は改札を抜け
ホームを横切り反対側の引込線の向こうの
空き地まで吹き抜ける。
その先には幽霊屋敷のように
空き部屋の目立つ
五年前には新築だったマンションが見える。
とても閑散とした風景だが
緑の風に吹かれる僕には好ましく思える
漸く我々は落ち着いた。
いろいろなものを失って
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