催涙雨/
板谷みきょう
確かなこと
など何処にも無く
春だ
と思った時には
もう すっかりと
夏でありました
例えば 野良犬を
叫び 慎ましく月
を 口ずさむ
まるで詩人
であるかのような
ベガとアルタイルの逢引は
帰り道さえ
見失う闇の夜
風を浴びて揺らぐ
ばかり
催涙雨
催涙雨が降る
催涙雨?
寂しさと 悲しさに
震え ながら
春だ
と思った時には
もう すっかりと
夏でありました
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