海という洞窟/吉岡ペペロ
 
ら始まる上海ツアーの最終チェックをフロー図でしていた
ペンとゆびを鼻にあてていたらカレーの匂いがした
フロー図がなんだかさっきのイソギンチャクが海の底に貼付いているように見えてきて、また、ヨシミを思い出した

ヨシミならこんな感じの話、よろこんでくれるだろうな、

イガタアヤコに話そうとは思わなかった
潜望鏡のしたイガタアヤコは海のなかにいた
シンゴは海ではなくて洞窟にいるのだった
ヨシミという洞窟にはだれも入れたくなかった
ふっとじぶんは微生物のような気がした
そう思うとシンゴの洞窟は海に代わっていた
ヨシミが海?そんなことを思考しながらペンをくるっと回転させるとアヤコが背伸びのようなそぶりをして浮かんだ

アヤちゃんって、これから陸でもやっていこうかなって迷ってる、両生類の先祖かもな、

シンゴはゆびさきのどこからカレーの匂いがしているのかしばらくさがしながらそう言ってみようと思った






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