海という洞窟/吉岡ペペロ
 
カワバタくん、ランチでもどう、

同僚のイガタアヤコがシンゴを誘う
いっしょに働いて10年以上になるのに話すようになったのはこのいちねんのことだ

飲み会で子育ての話になったときなぜかシンゴのことをみなが聞きたがった

これ言うと女の子はだいたいヒクんだけど、

シンゴはおむつの交換をしたこともこどもをお風呂にいれたこともない
入学式とかにもいっさいでたことがない

案のじょう同僚たちが無言で所在なさげになった
イガタアヤコが中ジョッキにはいった透明の酒をくいっと飲み背伸びのようなそぶりのあと口をひらいた
怒られるのかなと思ってシンゴは身構えたがそうではなかった


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