ない/寒雪
 


ぼくには右腕がない
好きなシチューを食べるのに
不便で仕方がない


ぼくには左足がない
好きなサッカーが出来なくて
歯がゆくてじっとしていられない


ぼくには光がない
好きなエレナがわからなくて
悲しくて泣くしかない


ぼくには両親がない
好きな子守歌が聴けなくて
温もりが欲しくてたまらない


残った耳には
低い地鳴りとともに
悪魔が呪いの咆哮を


まだぼくから
なにか奪う気なの?

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