フラッシュバック/山中 烏流
し
それから
向かいの席の若者たちは
よく知っていて
それに従っている
きみが席をたったことで
掻かれた床の音が
その、引き金になる
カーテン越しの夜明けに、
きみは腕を敷いた。
6時の鐘が鳴って、
その日
わたしは起こされたのだ。
***
油染みの重なったプリーツ
ゴムに変身した林檎と
終わらないしりとりのこと
寝転がった長机が
ゆりかごの真似
偽者の蔦とふたりきりの夕べ
わたしもきみも
いずれ、変わってしまうから
その
当たり前のために
こうして
断片を植えつけていく
ヒーローになりたかった。
ヒロインではなく、だ。
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