ブルースは熱と湿度で少し間延びしている/ホロウ・シカエルボク
 

真夏がアスファルトに喰らいついてる
だらりと垂れた野良犬どもの舌は
桜のころより一〇センチは長くて細い
渋滞気味の二車線に鳴り響くクラクションのブルース
運転席にいる連中はみんながみんな
万物の神にでもなったような傲慢さで憤っている
Aマイナー鳴らしたときの
6弦の響きが良くないって
ソフト・ケースを背負った男が携帯電話にぼやいている
アイス・クリームの屋台に座った若い娘は
滑稽なくらいの日焼け対策をしてファッション雑誌に視線を植樹している
長い休みを取って
海沿いでしばらく呆けていたいとやつれた友達
曖昧な返事をして俺はディスプレイを睨んで
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