雨垂れる黙祷/水川史生
 
ガラスのような爪の角度で傷 喉を焼いた消息のもとに 
運ばれる鉄線が 初めの陶酔に塗れている 
帰るんだ 相殺するみたいな声だけで わたし と定義する 
浸されていく盲目に 色を混ぜては瞬きをする あなただ 
白く広げるパラボラに注ぐ 跳ね返る充足が、空! 
ペニシリンを打ちこんで 紫の切っ先で抉る余白がてのひら 
滲み出し残照に暮れている あなたの首筋が赤く燃える 
伸びあがる植物の発光する水辺で 嘆くのを待つ太陽だ 
どうしても あなた 輪郭が曖昧になる 
映らない明滅上から 放たれて尾を引く影 
鋭角から滴る その一滴に混ぜた溜息が 
午後のわたしを沈めて眩む 
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