海岸図/天野茂典
 
美しくはない/
 巨峰のような乳房だ
 やわらかな洞窟だ
 滴る肉汁
 草いきれのなかで/
 黒い空があおみがかって深い
 かつては俺も機関車を走らせたのだ
 線路の先まで
 そこが俺の宿だったのだ
 女の髪を梳いてやる
 女の顔を洗ってやる/
 小川の淵で沐浴する女
 肌は石鹸のように白かった
 色鉛筆がほしい/
 ここらで演劇を閉じるように
 人力飛行機に乗って
 蕁草の茂みの上空を
 骸骨のように老化して
 よい匂いをたてながら/
 あらゆることばのスプレーを/
 空から散布してやりたいのだ

 好きなんです
 あなたが/
 

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