夜の眼/水川史生
 
青さに眩む前に夜明けの列車に体を乗せた 
何処までも続くような錯覚で、延長の向こうの水面を見ている 
駆けて、星の海と鯨が昇る空と、眩しさだけの昨日と 
仰ぐその瞬間にシャッターを切る 
聴こえているだろう(月まで届く声は死んでいる) 
枯れては、いなかっただろう 
(それが、僕、或いは私、であったのならば) 
先送りにする 380nmからの色彩と、虹彩の揺れる場所から 
伸ばしたのは、手だけではなかったのなら 
(月まで届く声は死んでいる) 
点滅するテールランプ それに飛翔 
溶解する輪郭が、果たして、夜の青さに消えるだろうか 
線で繋いで君が言う 君の言葉が、染まる 
馴染、む、のだ、と。 
(呼吸の鍵盤の音) 
(詩に変われ、と) 
指先からの閃光 
夜の青さに眼が眩んだならば 
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