まずまず/ホロウ・シカエルボク
歌うのかなんとなく分かるような気がした、だから、よかったら今夜見に来てよ、という誘いには暇があったらなと曖昧に返した
本屋を出たら雨が降り始めていた、まだ傘が必要なほどじゃなかった、もっともずぶ濡れになっちまうほどの雨でもない限り、傘が必要なときなんてあんまりないけれど…北の空はマジックの種を隠しているみたいにぼんやりと煙っていた、買ったばかりのくだらないコミックを脇に抱えて、家までの道のりを走って帰った…びっくりするくらいすぐに息が上がった、だけど止めなかった、部屋の玄関で前屈みになって息を整えた、年をくったんだ、と思った、だけど、諦めなかった、今日のところはそれでまずまずっていうところだった
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