renovation/渡 ひろこ
 
それは忽然と現れた。
スパニッシュブルーの空を突き刺してそびえ建つ、
研ぎ澄まされた円錐形のオブジェ。
傾斜角75度の強い意志が天を貫いている。
指し示す先はどこまでも高く
その先端から曖昧な輪郭を許さない
パルスを発生している。
芯のないレプリカを嫌う
磨かれたアートの揺るぎない屹立。


視界に入らないようにそっとすり抜けるつもりだった。
通りすがりの。忍び足で。
見つかってはいけない。隙間だらけの核心を。
気づかれぬようにと
畏怖で震える二足歩行がままならない。
そろりとおぼつかない一歩を踏み出す。
自信のない足元は途端につまづき、
思わず「poet」とい
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