十三歳、/光井 新
 
 母さん、ねぇ、お願いがあるんだ。どうしても欲しい本があるんだ。もう僕は、他には何もいらないから、その一冊だけ、ね、いいでしょ。その本は図書館には置いてないし、発行部数も少なくて、でもそんな事はどうでもよくて、僕はただ、どうしても手元に置いておきたいと思うんだ。二千円位なんだけど、これからの僕の人生を左右すると思うんだ。エッチな本とか、そういう変なのじゃないよ、とても素晴らしい本なんだよ、その、えっと、詩集なんだけど。
 凄い詩人がいるんだ。インターネットで偶然見つけたんだけど、本当に凄い人なんだ。教科書にのってるような、宮澤賢治とか、萩原朔太郎とか、中原中也とか、高村光太郎とか、母さんでも知っ
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