語り/十二支蝶
 
遥か昔 人がまだ平穏に暮らしていたその地で 
類なき大罪を犯した五人の人間がいた
天に住まう神々はその所業を咎め その者達五人の魂を
永遠に奈落の世へと封じ込めようとしたが
果てし無き憎悪と執念で包まれた魂の力は神の想像を絶し 
遂に彼らは死した後人が訪れるであろう天界の地において
神々を相手に暴走と殺戮を繰り返し 
長き年月もの間  数多の神々の悲鳴が天の地に鳴り響いた

やがてその刃を下した五人の人間は 再び地上へと降立つ為 
天界を飛び去ろうとしたその刹那 一柱の女神が彼らに呪いをかけた 
呪いをかけられた人間たちの背には黒い漆黒の翼が生え 
もはや人間とは到底呼べぬ禍々しい姿となっていた
だがその人間たちは己の凶体をみても全く意に反さず なぜか少し笑っていたという     一人の人間を除いて

呪いをかけた女神はある詞を残したあと程なくして力尽きた 
禍々しい彼らの姿を最初にみた地上に生きる人間に 
たった五人の人間が犯した神殺しという名の禁罪を語り継がせるために


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