よぶん/佐藤真夏
くちばしの長く伸びた蚊に足の指を吸われながら
恋人の首をころりと乗せた二の腕の潰れ具合を計っていた。
前髪の先に留まるシャワーの残り水が
目尻を伝ってシーツにつくと、
空は落ち、
圧縮袋のなかで慰め合ってるみたいだね。
ナツメ電球のオレンジが
目に流れ込むとチカチカして、
階段を降りていくみたいに眠りに向かう。
うとうとして
そわそわして
しあわせだねしあわせだよねを連呼し、
耳を塞ぎたくなるほどの
あせり。
こぶしを握るように
震わせて閉じるまぶた
舌の先でぺろりんと舐め取った、よぶんが、
口の中で生きているのに、よぶんは、
よぶんでしかない、
小さな熱、
ひかりのかけら、
二の腕の、えも言われぬ潰れ方、
窒息、
欲情が砂漠に落ちる。
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