日曜日のカエルは旅好きである/石川敬大
 


 またいつもの
 自転車にのって
 ぼくがむかっていた
 先とは
 どこだろう

 でも
 いまは
 どこだろうがかまわないおもいでいっぱいなのは
 はたして
 どうした心境の変化なのだろう

     *

 雨がきて
 カエルがよろこんで
 池にポチャリとはねたりして
 みていると
 カエルそのものになって
 池の水をくぐったり
 巌にあがって雨にうたれて
 空をみあげてゲロゲロよろこんだりしている
 ぼくがいて

     *

 また自転車にのっている
 どこかアジアの熱帯地方のようだけれど暑さも潮風もかんじない
 と、いうか、皮膚感覚はなくて
 映像だけが前方からきて後方へながれさってゆく
 ああ
 いつもの旅の感覚だ

 雨音がはげしい
 カエルのゲコゲコが、文字だけでぼくにやってきてその姿はない
 きっとあじさいも庭で微笑んでいることだろう

     *

 朝の浅瀬を
 毒素とカドがとれた流木のぼくは
 まだうつらうつらと、漂っている





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