一枚の白い紙/ryou
 
ひとは胸に
一枚の白い紙をもって
生まれてくる

やがてそこには
おとなになったらなりたい
夢が書かれ、

送辞や答辞の書かれる
春もあるだろう

結局出せなかった
ラブレターが書かれる長い夜もあり

二十歳を越えたある日
その紙に政治家の名前が書かれ
暗い箱の中を舞う午後もある

そして
わが子の名前を記した紙が
生まれたばかりの子の枕元に
飾られるとき

その子もまた
胸に一枚の白い紙をもっているのだ

その紙の名前は
ひとはだれも言葉にしないけれど
「未来」と、
そっと胸で呼んでいる


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