雨の季/木立 悟
雨の日 音は海辺を描いた
さまざまな色を塗り重ねた
色はどれも少なかった
月や花からわけてもらった
銀と灰
黒と金
もっといろいろ描けたのに
ずっと待ちくたびれていた
箱の隅でかがやいていた
独りの食事
歪みは昇り
歪みは昇り
祈りは消えず
背を持ち上げた
ひとつの窓に
六つもあって
それは羽の波だった
消えては現われ
通るたびに触れる葉の
すぐそばにいる言葉だった
みんな何かになりたいのだという
桃は緑になりたいのだという
緑は緑のままでいいのだという
光になりながら
空になりながら
雨のまま海になりながら
色を並べた箱の隅に
静かに静かに降りそそぎながら
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