蟹と洗濯機/吉兆夢
をまた
丸めて
いまごろ洗濯機の
うす明るい底のほうでは
経血によごれた下着
柔らかかったあなたのつむじを
糸くずにしたい
蟹が、
もまれて、
給水口からあふれ出した
いくどめかの海
が、めくれあがる瞬間
砂は ひかる
( 月だったなら 欠けていくのに
しおまねき、おまえが哀しい―― )
まぶたを開けると
あおは深く
真っ暗な足もとから
ひかりというひかりが
渦巻きながら昇ってゆく
水面のむこうに
人影がある
あなた、だと思う
口のあたりが
ゆらゆらと歪み
何か伝えようとしている
ようで
わたしは
砂だんごをつかみ
手を振りかけた
ような姿勢で
放てずに、いる
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