メレンゲの恋/うめぜき
 
は重厚に、ある時は軽やかに、またある時は賛美歌のように
街を音楽にした
メレンゲはポパイをいつも焼き付けた

  ※

鉱山で事故が起きたのはそれから1年が経った時のことだった
あの男が奏でていた音楽を思い出そうとして
思い出せずに、胸を締め付けた
それでもメレンゲは待ち続けた
街全体が喪に服し、その喪が明けても
メレンゲは空を見上げた

  ※

ロンダはメレンゲの話を最後まで聞けたことがなかった
いつも眠たくなり、眠ってしまうのだった
メレンゲの話はやがて音楽となり
美しくロンダの耳を潜り抜けてしまうからだった

ロンダは夢の中で空を見上げると
決まってアダレの空を行く鉱山の周辺で
漆黒の汽車がぐるぐると回遊している

辺りは次第に明るくなる

蕾だった花々がふわっと咲き乱れはじめた
赤・白・青
汽車は空を浮遊する

メレンゲの歌が響いている
悲しげだが、美しく響いている
花々が揺れる
美しい歌が響いている




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