通りすがりの/光 七清
広げた手のひらに
じゅ 脂一滴、落ちて広がる
広げた手のひらは
じゅ 脂一滴、受けて悶えた
「 」
形にせず、呻くことを
覚えたままに、繰り返す
ととととと
砂が落ちる
ととととと
ガラスの中で
囲われたイノチを、つむぎ続ける
今日は早く起きた
昨日は起きなかった
手首に流れるヘモグロビンを
感じながら、生きている
目を逸らした
くじけなかった
ただ、歩き続けることを選んでいた
意識
きいたこともない言葉
耳慣れぬ、
そう切り捨てたこと
ざわめいたなか
入り込んで喚いた
始まってもいないこと だらけだ
手のひらをふたつ
あわせたなか
「 」
芽の出る種を、しまっていた
「 」
空白が多いね
まったくの無地
若さや無知とは、繫がらないもの
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