めまい/ベンジャミン
 
真っ白だったところに
思い出はときおり順番もなく
まるで誰かの落書きのように在る
それはたしかに自分が経験したことや
自分が学んだものであるはずなのに
忘れてしまいたいことほど鮮明で
忘れることは難しい

たとえば
悲しみとか

眠ろうとして目をとじて
まぶたの裏に何かが映って見えるのは
きっと気のせいです
けれど
その何かを見ようとして
すべてがぼんやりとした景色に縁取られ
くらくらとまるで
めまいでもおこしたようになるのは

本当はめまいではなく
いつも現実です
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