新橋烏森口のひと/恋月 ぴの
 
将さんの問いかけに照れくさいのか一気にグラスを空けるのど元は男らしくて
時の経つのを忘れ三人であれこれと話し合ったあの日がとても懐かしい

浜松町へ立ち寄る途中で新橋駅へ下りてみた
以前と変わらず広場には機関車展示されてはいるものの
翔太さんと暇つぶしに立ち寄ったキムラヤはとうに無くなっていた

あの事故から早いもので5年も経ってしまった
OBとしてパーティーに参加した三国山脈谷川岳への登頂
後輩をかばいながら滑落していった彼の消息は未だ確かめられないままで
雪解けの季節になると気がかりでならないのだけど

あのお店まだやっているのかな

たとえ開店前だとしてもお店の様子ぐらいはと思ってはみたものの
幸せだった日々の思い出まで失ってしまう不安にかられ

まるで追っ手から逃げるようにして山手線外回り最後尾車両へ乗り込んだ


戻る   Point(20)