夕暮れ/デラシネ
私達は断崖に立っていた、震える左手は、あなたの背中を撫でていた、
寄せては砕ける波を眺めながら、ここには私達しか居ないね、と言いかけて、
逃げてきた世界から現実から、切り離されたような、心もとなさを笑った、
笑いは不安に変わりゆき、夕暮れの色と共に、濃さを増してゆく。
帰ろうか、、、
何処へ帰るというのだろう、
無表情に海を見つめ続ける私達の心は、
此処に居なく、
逃げてきた世界にも居なく、
海の底にも居ないだろう。
帰ろう、、、
ぬけがらのような手を繋ぎ、歩きだす、どちらからともなく、目を合わす、
瞳に映る私の顔は、ひび割れて、遠く、夢を見ているようで、
私達は、お互いの心中へも、帰れないことを、知った。
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