湿った窓/
たもつ
誰かのための
湿った窓がある
三本の線を反復できずに歩いて渡る
蟹たち
をわたしは避けて
自分の指の形がいつもより気になったので
どこかに忘れてきた雨傘の代わりに
古道具屋で小さな
置時計を買ったのだった
それからノートに
知っている親族の名前を
できる限り書き連ねていく
インクのないペンで
空白だけが増えていく
もしわたしがこのまま紙飛行機になっても
気づく人もいなくなってしまった
湿った窓を開ける
と、いつかきっと
誰かは閉めるのだろう
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