こどものころ/かんな
 
を組み立てていた
かろうじて形作られたものがおそらく自我だった

いきる意味を考えるほど海は広くはなく
しぬ理由を求めるほど狭くもなかった
夕暮れに染まる砂浜をすくいに自転車をこいだ

具体性のないものほど
わたしは欲して止まなかった
そして誰にも伝播していかない唯一の存在を
いつも探して止まなかった

成長という過程をいつも仮定していたように
おとなになることを望んでは
幼さをかきむしる日々を過ごした

じりじりと肌を焼く太陽の熱を知ったとき
ひりひりと熱を冷ます月の冷たさに触れたとき
わたしの本能にすみついたいのちが芽吹いた

あれは泣き方を忘れた日の夕暮れ
ベッドでひとり自慰をするわたしが夢みた現実は
途方もない速度で夜という未来に吸い込まれた

行き先はどこだ
何処かへ行ってしまう吸引力に逆らって
わたしの背丈分だけ傷ついた柱にしがみついた
みしり、と音がしたような気がして

わたしは行くよ

大人びたわたしの破片だけがせつなに刻まれ
母の胸元から羽ばたいた気がした


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