越えられぬ丘/テシノ
ここから見えるのは緩やかな勾配と
奥行きのある青い空
越えられぬ丘と誰かが呼んだ
そういうものがあるのだと
そういうこともあるのだと
例えばパレードを追い掛けていく子供が
その浅いふもとで足を止めて聞いている
丘の向こうへ消えるジンタの音色
幼いなりの器量で理解した
自分の帰るべき場所というもの
例えばむかし少年が友から聞いた
その言葉の中に見つけた小さな偉大さ
嫉妬にも似た尊敬を抱きつつ
成長した今も眩しげに見上げる
丘の上で彼方をみはるかす友の姿を
叶わぬ憧れとも
単なる諦めとも違う
頂きまでの距離はたやすく
しかし
踏み入れる足が畏れるような
美しくそびえ立つあなたの越えられぬ丘
そういうものがあるのだと
そういうこともあるのだと
戻る 編 削 Point(3)