まぼろしの大火(習作十句)/古月
 
今はまだ誰のものでもない言葉

はつなつは命をすこし延滞する

母のおなかは折り鶴で満員です

陽だまりにゆりかご骨の色をして

仏飯に日の丸さして笑ってよ

遺影にと醜い写真差し出して

女にはつぐないがある土用波

面かぶるときもきちんと化粧して

九日の波間に父と母はいる

まぼろしの大火は母の帯留めに
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