雨とかくれんぼ。/敬語
何故かと問われれば、具体的な根拠がないので答えられないのだけれど、今日は雨が降る予定。
だから僕は、お気に入りの傘を持って意気揚々と出掛けていった。
しかし、どのくらい歩いても歩いても、雨はなかなか降ってこない。
不思議に思った僕がふと空を見上げると、太陽は雲の裏へと隠れていた。
そしてよくよく見ると、雨も雲の裏へと隠れていた。
なるほど。なるほど。
なかなか雨が降らないと思ったら、どうやら雨はかくれんぼをしているらしい。
仕方ないので、僕は鬼の役をしてあげることにした。
雨がかくれんぼに飽きて雲の裏から出てくるのが先か、僕が十を数え終わり雨を見付けるのが先か、それとも雨が隠れきるか。
これは僕と雨との真剣勝負。
「じゃあ、いくよ。いーち、にーい、さーん、しーい、ごーお、ろー……あっ」
ぽつりと、僕の頬に雨粒が落ちる。
そして、それを拭いながら、僕は満面の笑みで高らかに宣言した。
「雨、みーつけた」
それから僕は、慌ててお気に入りの傘を差した。
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