砂塵の街/ベンジャミン
 
しさや いたわりや
おもいやりや きづかいや
けれど何一つ特別なものはない
誰もが持っているはずのものだ
此処は砂漠ではないのだから
突然のオアシスのような偶然でなく
視線を少し上に向けて
渇いた風に吹き上げられた
細かな砂の一粒に気づくことは
それほど難しくはない
此処は砂漠ではないのだから
もしも誰かの哀しみや淋しさが
どれほど小さな砂粒に見えても
ただ生きることに精一杯で
そんな些細なことを
些細に受け止めることしかできなくても
砂塵のようなこころがざわめいて
わずかでも知ることができるなら
そこに一粒の涙をこぼし
この渇いた砂塵の街に
大切な緑を育ててゆくことは
きっと難しくはない
わたしたちはどんなに削られても
そんなやわらかい所までは
きっと失ってはいない
此処がたとえ砂塵の街であっても
砂漠ではないのだから}
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