いつかいつの日か、透明になる君に/梨玖
 
形を飾る季節だった



忙しい日常に人恋しくなりだした時は
君と手を繋ごうと思った
確か椿が落ちる季節だった

死人みたいな体温だな、と
半分冗談めいた口調でそう言った
確か周りが白しかない季節だった




矛盾もあった
不思議もあった
記憶を殺して封じ込めた
気づいた時は僕が壊れると確信していた




アザレアも向日葵も桔梗も椿も
君が好きな花だった
枯れることは怖かった
連想してしまうことは怖かった




苦い唾を飲み込んで
漸く見ることができた視界には


散った花束



墓標に刻む

君の名前




戻る   Point(2)