いつかいつの日か、透明になる君に/梨玖
形を飾る季節だった
忙しい日常に人恋しくなりだした時は
君と手を繋ごうと思った
確か椿が落ちる季節だった
死人みたいな体温だな、と
半分冗談めいた口調でそう言った
確か周りが白しかない季節だった
矛盾もあった
不思議もあった
記憶を殺して封じ込めた
気づいた時は僕が壊れると確信していた
アザレアも向日葵も桔梗も椿も
君が好きな花だった
枯れることは怖かった
連想してしまうことは怖かった
苦い唾を飲み込んで
漸く見ることができた視界には
散った花束
墓標に刻む
君の名前
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